今日は世にも珍しい花をご覧に入れましょう。
その名も「クマガイソウ/熊谷草」です!
クマガイソウは環境省のレッドデータブックで絶滅危惧II類とされています。
日本の県レベルではさらに高いレベルで絶滅が危惧されている県もあるそうです。
学名:Cypripedium japonicum
科属:ラン科アツモリソウ属
分布:北海道南部から九州
花期:4〜5月
「クマガイソウ/熊谷草」を語る上で欠かせないのが、同属の「アツモリソウ/敦盛草」という花です。
アツモリソウとはこんな花です→こちら。
この2つの名は平家物語の平敦盛の最期の話にちなんでいます。
神戸の一の谷の合戦で敗れた平家を追って、熊谷直実は自分の息子と同じ年ごろの平敦盛の首を討ち取らざるを得ず、その後その霊を弔うために出家しました。
当時の武者は、後ろからの矢を防ぐために母衣(ほろ)を背負っていたのですが、この膨らんだ形の唇弁をその母衣に見立て、がっしりした方を熊谷直実(くまがいなおざね)に、優しげな姿の方を平敦盛(たいらのあつもり)にあてたことに由来します。
(※「母衣」…大きな風船のようにふくらませた布。弓矢を防ぐ。)
また、花色がそれぞれ白、赤っぽいため源氏の白旗、平氏の赤旗に見立てたための命名ともいわれます。
栽培のための乱獲によって自生を見ることは今やまれです。クマガイソウは無菌播種による増殖技術が確立されておらず、アツモリソウのように実生増殖した苗を大量供給することはできせん。にもかかわらず、悪質なマニアや業者に乱獲、盗掘され続けているため、このままなら絶滅するといっても過言ではないのです。
生育適正条件が狭く、栽培場所は厳密に選ぶ必要があります。明るい日陰で、土壌の状態、温度、湿度が栽培に適したものであること、周囲に風よけになるものがあること、など制約が多く、単に美しいから、珍しいからといって初心者が気安く栽培できるようなものではないようです。
なんとまあ、人目を引く出立ちでありましょうか。
葉っぱを見て、イッセイミヤケのPLEATS PLEASEを連想したのは、私だけではないはず(笑)
と、そんなくだらないことを考えながら最後に一句。
「亡き今も そこに見えるは 武者が花」
おあとがよろしいようで。