今回は、先日、素敵なお客様のもとへお嫁に行った60年前に作られた獅子の置物をご覧に入れましょう。
見てください、この迫力!芸の細かさ!年月が経たないと出ない色の渋さ。色合いについては、閲覧状況によって異なりますので、詳細な魅力がお伝えできないのが非常に残念ですが。。。
年代物の作品にはどこかしらキズがあるものですがこれは無傷ですので、そう言う意味でもモノが良い。
それに、細工物は窯の中で焼いた時にパーツを接着した繋ぎ目にヒビが入りやすいんです。
余談ですが、古備前などを買われる際は、よーーーく調べてくださいね。
一見無傷の様に見えて瞬間接着材で付けてあるものも存在します。
偽物を掴まされるよりはマシかもしれませんが、それを知らずに買って相場以上の金額を出してしまった、ということの無いように要注意です。
おっと、話をもとに戻しましょう。
60年前というと初代の陶古の時代にあたりますが、窯元ですので当主の小西陶古 本人が作ったものではありません。
折角ですから、ここで【窯元と作家の違い】について説明しておきます。
簡単に言えば、窯元は「量産品」、作家は「一点もの」とお考えいただければ分かりやすいと思います。
例えば、量販店で家電を買うとしましょう。
パナ◯ニックの掃除機を買う時、誰がデザインしたかを意識したことはありますか?
勿論、パナ◯ニックにも企画発案者やデザイナーはいますが、購入者側は飽くまでもパナ◯ニックというブランドの商品として買いますよね。
売る側も個人名を出したりはしません。
窯元も同じです。
窯元に職人(陶工)が5人いようが10人いようが、誰が作ってもその窯の屋号(ブランド)=当店で言えば「(小西)陶古」の作品、商品ということになります。
職人が多いほど作業効率は上がりますし、仕上がりが均一なものを量産できるので単価は比較的リーズナブル。業者、デパートにも卸しやすいのです。
自宅での普段使いが目的の方や、飲食店を経営されている方だけでなく、引き出物や内祝い、記念品などのご贈答用に購入される方も多いです。
ここだけの話。
色はすごく良いのに、注ぎ口が少し傾いている徳利があったとします。
おそらく正規の値段で販売してもお客さんに何ら文句を言われないはずですが、当店ではワケアリ(2等品)扱いとなり、かなり安くして販売します。
何故、形に歪みがあるだけで2等品扱いになるのか、
これが作家ものだと「味があるねぇ」「わざと歪ませたんです」で通用しますが、
先ほど、「仕上がりが均一なものが量産できる」と言いましたが、そうしなければならないわけで、そこから弾かれたものは業者さんの手前ということもあり、正規の値段では販売しない事にしています。
決して粗悪品ではないですし、お客様にとっては非常にお買い得ですよね☆
一方、作家は全ての作品を作家自身で制作しますので、窯元に比べると同じ物を大量に作るわけでは無いですし、
また、売れるからという理由で定番で同じ物を作るかというと、そこは作家の気分次第ですので、次また同じものに出会える保証はないですから、基本的には一点ものという扱いになります。
窯元と違って商品の価格を気にせずに土や焼成に拘れるということもあり、単価は必然的に高くなります。
「ほ〜んと、作家ものは高いよね〜」「ちゃんと価値が分かる人じゃないと、他人にあげるのは勿体ないな…」というのもごもっともだと思います。
数ある中から、こだわって質の高いお気に入りの一点を手に入れたい!という方には、作家の作品を好む場合が多いでしょう。
と、珍しく長く語って参りましたが、
細工に関して言えば、(特に当窯元は「細工物の陶古」と言われるぐらいですから)窯元であろうが、作家であろうが、その価値に優劣は付けられません。
もちろん、細工物と言ってもピンキリです。
一番簡単で安く済ませる方法は、2面で型取りして張り合わせるというだけの物。これならかなり生産スピードが上がりますし、出来る人も多いです。
しかし、当店の細工の形は非常に複雑で、型取りするのも一苦労。またそれを張り合わせるのも然り。
それが終わると、細かい表情、毛並みの一本一本を全て手描きで行います。この時のヘラ使いで、質の高さに差が出る訳です。
この大きさでこの繊細さだと、まず焼くまでの白地を作る段階で1週間では出来ません。
型があるとは言え、気の遠くなる作業。
この様な作業は性格が出ますから、ろくろ専門、細工専門、と分野ごとに分かれていたりします。
吸い込まれそうな眼力の魅力も然ることながら、細かく表現された口の中の造形は秀逸です。
口を開けた表情を作ったり焼いたりするのは非常に難しいですし、また、座っているものを作るより、四つ足で立っているものの方が難しいです。
石を多く含む石もの(磁器)に対して、備前の様な土もの(土器)は、焼いた時に収縮することで、座りが悪く安定しにくいものが多く出てしまうからです。
皿の様な平たい物は反ってしまうことが多く扱いにくい土なのです。
ここで、細工物を選ぶ時のポイントを一つご紹介☆
顔には柄が無く、胴体など他の部分に柄があるのを選ぶのが良いでしょう※。
窯の中で灰が掛かって顔に柄が出てしまうと、表情が分かりづらくなるからです。
顔は文字通り、商品の顔、要ですからね。
そういう点でもこの獅子は見事!
※それぞれの好みもありますから、飽くまでもご参考まで。。。
現在の細工物を担当している職人は40年来のベテランで、伝統工芸師の手ほどき受けていますから、技と質の高さは当時の職人と引けを取りません。
以前紹介した今年の干支 辰の置物をご覧になれば、納得いただけると思います。
「大」http://www.toukogama.com/1371
「中/小」http://www.toukogama.com/1401
珍しく、備前焼について真面目に語ってみましたがいかがでしたか?参考になりましたでしょうか。
小出しにすべきだったかと少し後悔しています(笑)あぁ、今後のネタが。。。
というわけで、今後とも「細工物の陶古」をご愛顧下さいますよう、宜しくお願い申し上げます。
アディオス