備前焼について

About Bizen

日本最古の六古窯

備前焼は、日本国の六古窯といわれている瀬戸・常滑・丹波・越前・信楽・備前の中で、もっとも古い窯です。須恵器から備前焼になり、無釉焼き締めの伝統を守りつづけて一千年の間、窯の煙は絶えたことはありません。古き良き伝統を守り、昔ながらの登り窯、松割木の燃料を用いて焼きます。うわぐすりをかけないで良質の陶土をじっくり焼き締める、ごく自然な土と炎の出会い、その融合によって生み出される素朴で使い込むほどに味が出る焼きものが備前焼なのです。

利休も愛した備前焼

備前焼を知るためには、まず「茶道」を知れと言われるほど、茶道と備前焼は親密な関係にあります。備前焼の素朴さが侘び寂びの美意識に通じるところがあり、評価され、わび茶の始まりが備前の価値を不動のものにしました。

わび茶の元祖、村田珠光は言っています。

「月も雲間なきはいやにて候」
雲ひとつない満月よりも、雲が僅かに懸かった月のほうが美しい。

備前を雲間の月としてその趣を強調したのです。

豊臣秀吉は北野の大茶会において水差し・花入れなどに備前焼を使用しました。千利休は自分の茶室に備前を飾り、古田織部も同じく備前の花入れを用いました。備前の抹茶茶碗でお茶をいただく際には、これらの偉大な茶人たちの歴史を感じながら、侘び寂びの美を楽しんでみてはいかがでしょうか。

備前焼は、お酒を美味しくすると言われています。

備前焼のビアマグにビールを注ぐと、きめの細かいクリーム状の泡が立ちます。このきめの細かい泡により、口当たりが大変まろやかになり、とてもビールが美味しく頂けます。これは上薬で覆わない表面の微細な土肌にビールが触れることによって起こるもので、きめの細かい泡は、時間が経っても消えにくく、ビールの美味しさを保ちます。

さらに備前の土は鉄分を多く含む為、保温、保冷、浄化作用に優れます。ビアマグを冷蔵庫で冷やしておくと、より一層冷たくて美味しいビールを楽しめますし、花器の水は腐りにくくなります。水をおいしく、やわらかくする効果があることが科学的にも確認されています。

生活に根ざしたこの焼き物は、

「備前水甕(みずがま)、水が腐らぬ」
「備前徳利お酒がうまい」

と昔からいわれてきたのです。

使って頂くと、大衆酒を特級酒にするとも言われる所以がきっとおわかりいただけるでしょう。

焼き色の種類

Color

釉薬を一切使わず「酸化焔焼成」によって堅く締められた赤みの強い味わいや、「窯変(ようへん)」によって生み出される一つとして同じ模様にはならないのが特徴です。

窯の中での炎の動きや、松割木の灰などによってこれらの多様な模様が生まれます。窯の中の位置や配置によって特色が現れますので、作家は偶然までも計算に入れ、焼き上がりのイメージを描いて窯に入れます。しかし、最終的には自然の力に委ねるわけですから、思わぬ失敗もあれば、予想外の芸術が誕生することもあり、これがおもしろいところでもあります。

  • 緋襷

    緋襷ヒダスキ

    HIDASUKI

    作品に稲わらを巻き大きな作品やサヤの中に入れて焼成すると、稲わらの成分と土の成分が化学変化をおこし緋色に発色します。緋色の襷(たすき)をかけたように見えるので緋襷と呼ばれています。緋襷の掛かり方や発色具合などのコントロールが難しい景色です。

  • 桟切り

    桟切りサンギリ

    SANGIRI

    備前焼のサンギリは窯変の代表的なもので、暗灰色、ねずみ色、青色、白色などの発色がみられます。燃料の燃えつきた炭火に作品の一部が覆われて、還元焼成になった部分にサンギリが現れます。土に含まれている鉄分と燃料の炭素の化合による変化です。

  • 胡麻

    胡麻ゴマ

    GOMA

    焼成中、作品に自然に降りかかった木の灰が高温により溶けて、釉薬化したものです。胡麻を振りかけたように見えるので、胡麻と呼ばれています。白や黄、緑などいろいろな色があります。

  • 青備前

    青備前アオビゼン

    AO-BIZEN

    青備前は、還元(酸化の反対で、酸素を取り除く作用)の強い場所で焼かれた作品が青灰色または黒色になったものです。必ずとれる焼き色ではなく、古くから偶然できる場合が多かったので、大変珍重されてきた焼き色です。

  • 灰かぶり

    灰かぶりハイカブリ

    HAI-KABURI

    登り窯で、焚き口のすぐ下の床で、燠に埋めて焼成します。床に接した下の面には自然の桟切りができ、上の面にはブツブツした半溶け状態の灰が、榎の肌のようにこびりついています。この焼けの無傷でいいものは、ひと窯焚いてほんの数点という珍重品です。

  • カセ胡麻

    カセ胡麻カセゴマ

    KASE-GOMA

    高温により水分がなくなった灰が作品に付着し、溶けて荒れた肌のようにカサカサになったもので胡麻の種類のひとつ。完全に作品に付着していない場合があり、剥離することがあります。

製造工程

Manufacturing process

土の処理

土の処理

原土は備前市伊部、香登の田の底に層をなしており、約2メートルの底から冬期に掘り出します。掘り出したままの土は焼くと傷が出やすい為、さらした状態で外気に触れさせ数年寝かせます。長いものは10年以上置き、粉砕・乾燥し、さらに水ひをもって数回沈殿ろ過して大切に使用します。

土練り

土練り

土は永く貯蔵するほど味が良くなり手に馴染みます。貯蔵庫から出した土を座布団大に切ってよく練り込み、更に小さく切り、細かな石を取り除いて菊練りにします。

ロクロ成形

ロクロ成形

土の感触を手に感じつつ、力強くあるいはソフトなタッチで土を伸ばしていきます。この時、ロクロの回転速度の加減が最も重要となります。ただ機械的に回すのではなく、作家の想いを込めて様々な形にしていきます。大きな壺などは蹴りロクロを使用します。

成形

成形

現代では少なくなった細工物は、主に手造りですが、獅子、大黒のような置物などを造る場合は型抜きで造り、その後ヘラでこれを組み立て、丹念な手作業で細かな表情を仕上げていきます。年季がかかり時間を要します。

乾燥

乾燥

出来上がった作品、即ち素地は直接日光が当たらない場所に置き、急激な乾きを避け徐々に乾燥させます。四季の気温・湿度を考慮し最適な乾燥状態で保管します。乾燥後、ヒダスキは緋稲ワラ巻いて直接炎が当たらない様に「さや」に入れ、窯詰めを行います。

窯焚き

窯焚き

備前焼の殆どは登り窯を使用し、赤松の割木で焚きます。陶古の大窯では、薪を約4000束使用して約14日間1200~1300℃の高熱を保ち、更に木炭を150俵使用し焚き込みます。焚き上がり後10日間ほど窯を冷やしたのち、窯から出します。窯出し後、表面に付着している灰などをサンドペーパーで丹念に落とし水漏れの検査を行い、完成となります。

使用上の注意

Precautions

備前焼をいつまでも安全にご愛用して頂くために、次の点にご注意下さいますようお願いいたします。

良質の陶土を長時間かけてじっくり焼き締めております。

急熱(高温)、急冷、特に熱に敏感で、急激な温度の変化で破損することがあります。

  • 急に熱を注いだり、直接火に当てないように。酒器・茶器などは湯煮(*注1)をしてから使ってください。強度が増します。ただし、皿、鉢、銘々皿などは湯煮をしない方がいいでしょう。酒は他の容器でカンをして、備前焼の徳利に移すのがいいでしょう。
  • 電子レンジ、オーブンでは使用しないで下さい。
  • ビアマグ、ジョッキは冷凍室には入れないでください。

注1「湯煮」… 水をたっぷり入れた鍋の中に陶器を入れ、完全に沈めて水から焚き始めます。10分ほど沸騰させた後、自然に冷ましてから取り出してください。

うわぐすり(釉薬)を使っておりませんので、器肌がなめらかではありません。

  • 花台、棚、テーブルなどに傷が付くことがあります。敷物をして使って頂くことをお勧めします。
  • 一つ一つ水漏れの検査をしておりますが、万一の水漏れにはご注意下さい。
  • 水漏れではありませんが、冷たい水またはビールなどを入れる、花入れやビールジョッキには結露現象がおこります。床を濡らさないよう注意して下さい。
  • 徳利、鉢などは水に充分浸してからお使い下さい。中に入れる物の臭いが器に移ることがあります。また、箱などに入れて収納する場合は、充分に乾燥させてから箱に入れてください。臭いとカビの原因となります。ご注意下さい。

堅牢な焼き物です。

  • 地震などで倒れたり、落下して人体に当たると大変です。安全な場所でお使い下さい。